03 修道士の暮らし

もちろん修道士の主たる仕事は心の清貧を保ち、絶えず祈りによって神に呼びかけることです。人は神に対して自分を開けば開くほど、自分の醜さや罪深さをより深く見、ますます謙遜になり、神の救いを求めるようになります。それが修道士の霊的生活の意義です。熟練した修道士は集中力のいる仕事をしているときでさえ、心からの感情をもって無言のうちに神の助けを求め、天軍(天使たち)の生きた臨在を感じ、思いつつ、働くことができます。このような状態を獲得するのは簡単ではありません。絶えず自分を捧げ、キリストの戒めを守り、「キリストのうちにある生活」に自分を釘付けます。だから修道士はキリストの兵士と呼ばれます。自分自身のうちにある「神不在の」罪との緊張した戦いに赴くようなものです。

食物の節制、自分の罪を頻繁に告白すること、長い奉神礼、睡眠を短くすることなど、すべては自己愛と、自分の楽しみ、エゴイズムを排除し、逆に、たましいの意志と勇気を善へと向かわせるため、怠惰やわがままを避けるための大切なメソッドです。神の意志において自分の意志を捨てる者だけがキリストの弟子となれるのです。

弟子たちに言われた。「わたしについて来たい者は、自分を捨て、自分の十字架を背負って、わたしに従いなさい。自分の命を救いたい と思う者は、それを失うが、わたしのために命を失うものは、それを 得る。人は、たとえ全世界を手に入れても、自分の命を失ったら、何 の得があろうか」(マタイによる福音書16章24-26節)

ロシアのことわざにあるように「生きたいように生きるのではな く、神が命ずるように生きなさい」ということです。だから修道院に 住む者はそれぞれ与えられた「従順を」行います。「従順」とは修道 院長から命じられる修道共同体と教会のための仕事です。

大修道院の兄弟(ブラチア);兄弟たちの従順の第一は、一日をサ イクルとした教会の奉神礼(礼拝)を行うことです。奉神礼は大修道 院らしく非常におごそかに行われ、特に祭日にはことさら豪華な礼 拝が行われます。奉神礼を実行するために、多くの教役者や聖職 者、またよく訓練された聖歌隊や誦経者が必要です。毎日修道院 内の聖堂では、聖体礼儀(聖餐式)が三カ所で三回行われ、大祭 日には五回も行われます。

大修道院の壁の外でも、セルギエフ・ポサードの刑務所、病院や孤児院、中学校、高等学校、モスクワ郊外や北カフカスの駐屯 軍などで兄弟(ブラチア);兄弟たちは牧者として、宣教者として働 いています。

大修道院は世界の正教文化と世を照らす中心の一つとなって います。併設されるモスクワ神学大学や神学校、聖歌隊指揮者や イコン画家養成学校は通信講座以外の在学生だけで七百人にも のぼります。正教文化の基礎を伝授するための技能向上のコース や、神学の会議、学者による国際学会も開かれます。修道院には出 版局、印刷所があり、また建築物修復センターや巡礼センターがあ り、またイコンや刺繍などの工房もあります。


正教会についてもっとお知りになりたい方は、
日本ハリストス正教会
http://www.orthodoxjapan.jp/

 

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